2024.10.07
賃貸借契約は相続の対象になるのか(賃借人編)
前回は賃貸借契約における賃貸人の相続について解説しました。
今回は反対に賃貸借契約における「賃借人」と相続について解説します。
不動産売却には関係ないですが、ひとつの知識としてご覧ください。
賃借人が死亡した場合の賃貸借
①賃借権は相続の対象に含まれる
賃貸借契約を締結することによって、賃借人には
当該物件を使用収益する権利や賃料の支払い義務などが生じることになります。
このような賃借権についても賃貸人の地位と同様に相続の対象に含まれますので
賃借人の死亡によって賃借権は相続人に相続されることになります。
なお居住用建物の賃貸借契約では賃借人が相続人なしに
死亡した場合において相続人でない同居者を保護するため
居住用建物賃借権の承継という特別の制度が設けられています(借地借家法36条1項)。
②敷金返還債権も相続される
被相続人が賃貸人に対して預けていた敷金については賃貸借契約が終了し
建物を明け渡す時点で賃貸人に対して返還を求めることができます。
このような敷金返還債権についても相続の対象になりますので
賃借人の死亡によって相続人に相続されることになります。
ただし敷金返還債権は金銭債権ですので相続人が
それぞれの法定相続分に応じて取得することになります。
相続人の一人が敷金全額を請求することができるわけではありませんので注意が必要です。
賃借権の相続に必要な手続き
①賃貸人への連絡
賃貸人たる地位の相続の場合と同様に賃借権の相続も
被相続人の死亡によって相続人が当然に賃借権を承継し
それについての賃貸人の同意は不要とされています。
しかし賃借人が死亡することによって
居住者や賃料の支払いをする人が変更になりますので
賃貸人側に混乱が生じないようにするために
賃貸人にその旨連絡をするようにしてください。
②新たに賃貸借契約書を作成すべき
賃借人の死亡によって従前の契約内容が
そのまま賃借人の相続人に引き継がれることになります。
そのため、新たに賃貸借契約書を作成しなければならないというわけではありません。
しかし共同相続人が複数いる場合、遺産分割が終わるまでは
賃借権は、相続人全員が共同で相続することになります。
その結果、各相続人は、それぞれが賃料全額の支払い義務を負っており
相続人同士の協議によって居住者や賃料の負担者を
決めたとしても賃貸人に対しては主張することができません。
当該物件に居住していない相続人が賃料の支払い義務を免れるためには
当該物件に居住する相続人が賃借権を単独相続する形で遺産分割を行い
賃借権を単独相続した相続人と賃貸人との間で
新たに賃貸借契約書を締結し直す必要があります。
③誰も居住しないのであれば解約する
被相続人が単独で居住していた物件の場合には
被相続人が死亡することによって当該物件を利用する必要性はなくなります。
誰も居住しない状態であったとしても賃借権は賃借人の相続人に承継されますので
賃貸借契約が存続している間は、相続人は賃料を負担しなければなりません。
このような負担を継続する意味はありませんので
誰も居住しないことが決まっていれば、すぐに賃貸借契約の解約の手続きを行ってください。
民法では期間の定めのない賃貸借契約については
解約申し入れ日から3か月を経過することによって終了するとされています(民法617条1項2号)。
また、期間の定めのある賃貸借契約であっても
契約上「中途解約可能」など解約権が留保されている場合には
期間の定めのある賃貸借契約と同様に解約が可能です。
解約の可否や契約終了日については契約内容によって異なってきますので
被相続人の賃貸借契約書の内容を確認してみるとよいでしょう。
まとめ
今回は賃貸借契約における賃借人の相続について解説しました。
賃貸人の相続と同様に賃貸人に早めに連絡して報告をすることをオススメします。
その後は今回の内容を参考に賃貸人と協議するようにしてください。
なお、このような内容でお困りの際は当社にお気軽にご相談ください。
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